穢(あい)

あたたかい話を読んだとき
他人の優しさに触れるたび
あの子と笑い合えていた日々を
思い出しては心臓の奥が鈍く疼く

傷つけて失くしたその日から
嬉しさの影に いつも痛みがつきまとう

楽しかった日常を自らの手で壊した
どうやら返り血のように飛び散った破片を
浴びてしまったらしい

取り除くことはしないでいた
いつか 傷口が癒えてしまうのを恐れた

大丈夫。もう傷つけない。
遠くでどうか笑っていて。

歪んでいる、と解ってはいるけれど
君と一緒にいたことを示す
唯一のものだと思うから
この甘やかな痛みを手放さないでいたい

手を伸ばしても届かない もどかしさに焼かれ
つぐないにすらなれない どうしようもない想いが
僕をころしてしまうまで
ずっと深く 突き刺さったままでいい


15/02/17