慢性愛情欠乏症

君に逢ってからなにも言えなくなった

伸びてきた指が唇を塞ぎ
嗤う ふたつの深い色に魅入られた

その瞳を抉りとってしまおう
焦がれてやまない網膜が
俺以外を映さないように

あなたに逢ってからなにも見えなくなった

灯りを落として包み込み
囁く ひとつの言葉に奪われた

その喉を噛みちぎってしまいましょう
耳朶をくすぐる低音を
あたしだけのものにしてしまえるように

はぐれないで と
手に入れたはずのぬくもりが
隣をするりとすり抜けて

君の瞳は何処を彷徨う

あなたの言葉は誰に寄り添う

引き寄せるたび
欠陥が増えゆく

頸を絞める痣
頬に零れたひとすじ

俺は

あたしは

そっと手を離した


15/02/09